ストーリー

愛媛県宇和島市。市立図書館の自転車課に所属する赤松雀(武田梨奈)は、同僚の岡崎賢一(小林豊)、アルバイトの原田ハナ(佐生雪)と共に自転車で街や島を駆け巡り、市民に本を届けている。

離島・九島に住むトメ(吉行和子)も雀の担当の一人。独り暮らしのトメは、届けてくれる本と雀との会話を楽しみにしていた。「また雀ちゃんの本が出たら買うけんね」と言うトメに苦笑いの雀には、文学賞を受賞して小説家デビューをしたという過去があった…。

市では、「宇和島伊達400年祭」を目前に控え、準備に盛り上がっていた。雀の祖父・辰三(目黒祐樹)は、何かというと「時は1615年!独眼竜と称された仙台伊達政宗公の長男である秀宗公が宇和島に入部したところから、宇和島藩伊達家が始まった!」と一席ぶつ。寡黙な父・武男(内藤剛志)は、どことなく雀と不仲。というのも、雀は小説家としてデビューした時に、父の反対を押し切って上京。処女作『夢のなか』を出版し夢が現実になった喜びに溢れるさなか、編集者の心無い言葉を耳にしてスランプとなり、2冊目の執筆を投げ出して地元に逃げ帰ってきたのだ。それからというもの「いつも中途半端で諦める」という父の小言に耳をふさぐ。家族思いの母・京子(岡田奈々)は、そんな雀を優しく見守っていた。

400年祭の中でも目玉となるのは、3000人もの大武者行列における“お姫様の復刻衣装”の披露。しかしその元となる肝心の宇和島藩『刺繍図録』が図書館で紛失している事が発覚!探し出さなければ打ち掛けの意匠が分からず、復元が出来ない状況に陥ったのだ。その大捜索に追われる図書館員たち。雀たち自転車課3人も、その急務につく。

ある日、トメは古いアルバムを見せながら雀に昔語りを聞かせる。「雀の務める市立図書館は、もとは伊達のお殿様が明治の頃に私財を投じて建てた伊達図書館だったこと。それが70年前の空襲で焼けてしまい、戦後の再建で現在の市立図書館になったこと」そしてトメは若い頃、伊達図書館で司書として働いていて、同僚の戸田健に想いを寄せていたことも照れながら話してくれた。戦時中であった当時、健が出征する前に気持ちを伝えたが、彼は何も応えずに戦争へ行き、戦死。トメは今も健の本当の気持ちがどうだったのか分からず、ずっと思い続けながら生きているのだった。

そんな中、図書館では自転車課の廃止を検討されていることが浮上。さらに、姫の打ち掛けの元となる図録の提出期日を、制作担当である呉服屋の寺尾から「あと3日」との最後通告を受ける。ピンチに囲まれ熱くなった雀は「もし図録を見つけたら、自転車課は存続して貰うぞ!」と上司へ無茶苦茶な啖呵をきり、自転車課3人で走り出す。はたして刺繍図録は見つかるのか!?図書館自転車課の存続は!?そして、がむしゃらに走り続ける雀は、新たな小説執筆へ歩み出すことができるのか!

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